独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施しているスポ
ーツ振興くじに関する会計検査の結果についての報告書(要
旨)
平
成
2
0
年
9
月
検査の背景及び実施状況
1 参議院からの検査要請の内容
( 1) 検査の対象
独立行政法人日本スポーツ振興センター、文部科学省
( 2) 検査の内容
独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施しているスポーツ振興くじについて
の次の各事項
① スポーツ振興くじに係る制度や運営の見直し状況
② スポーツ振興くじの売上げ、債務、繰越欠損の推移
③ 販売システムの運用経費及び開発規模
④ 繰越欠損の解消に向けての取組の状況
2 スポーツ振興投票の概要
スポーツ振興投票は、新たなスポーツ振興政策を実施するため、その財源確保の手段
として導入された制度であり、「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」(平成10年法
律第63号。以下「投票法」という。)により、独立行政法人日本スポーツ振興センター(平
成15年9月30日以前は日本体育・学校健康センター。以下「センター」という。)は、ス
ポーツ振興投票を行うことができるとされている。
そして、スポーツ振興投票の収益は、その3分の1に相当する額を国庫納付し、残りの
3分の2に相当する額を、地方公共団体又はスポーツ団体が行う地域におけるスポーツの
振興を目的とする事業を行うための拠点として設置する施設の整備等に要する資金の支
給等(以下「くじ助成」という。)に充てるため、スポーツ振興投票事業準備金(日本体
育・学校健康センターではスポーツ振興事業準備金。以下「助成準備金」という。)とし
て整理しなければならないとされている(図1参照)。したがって、収益については、す
べて国庫納付金及び助成準備金(以下「助成等」という。)に充てられることになる。
図1 スポーツ振興投票に係る収益とその使途
収益
2/ 3 1/ 3
助 成 準 備 金
払戻金充当額
国 庫
運営費
センターは、第Ⅰ期(12年10月28日∼17年12月2日)においては、売りさばきなどの業
務を包括的に株式会社りそな銀行(15年2月28日以前は合併前の株式会社大和銀行。以下
りそな銀行 という に委託していたが 第Ⅱ期 17年12月3日∼25年3月31日 にお
「 」 。) 、 ( )
いては、直接運営することとし、経営管理業務及び情報処理システム開発運用管理業務
について、日本ユニシス株式会社(以下「日本ユニシス」という。)に委託している。
センターが、スポーツ振興投票券(以下「スポーツ振興くじ」という。)の発売を開始
した12事業年度から19事業年度までのスポーツ振興くじの売上金額等の実績は表1のとお
りとなっており、売上金額は、13事業年度の642億円を最高に14事業年度以降18事業年度
まで減少し続けていた。
表1 スポーツ振興くじの売上金額、収益、助成準備金繰入額、国庫納付金及び繰越欠損金の実績
(単位:百万円)
事業年度
平成12 13 14 15 16 17 18 19
項 目
3, 063 64, 266 36, 058 19, 877 15, 694 14, 905 13, 470 63, 711
売上金額
- 10, 651 2, 423 331 147 134 145 2, 183
収益
- 7, 100 1, 615 220 98 89 96 1, 455
助成準備金繰入額
- 3, 550 807 110 49 44 48 727
国庫納付金
433 278 2, 474 9, 436 15, 504 29, 270 26, 417 9, 551
繰越欠損金
検査の結果
1 スポーツ振興くじに係る制度や運営の見直し状況
( 1) 制度の見直し状況
スポーツ振興くじをより魅力あるものとするために、スポーツ議員連盟から文部科
学大臣に提言された改善方策等を踏まえて、次のような制度の見直しが行われた。
① 組合せの総数が100万を下回らないという制限を廃止し、最高払戻金額等の見直し
をしたことにより、組合せの総数が243通りの「mini toto」等の当たりや
すいくじや、最高払戻金額が6億円となる「BIG」の発売が可能となった。
② スポーツ振興くじの発売に当たって、当面販売場所の対象としないとされたコン
、 、 。
ビニエンスストアを販売場所の対象とし また インターネット販売を可能とした
③ 年間実施回数の上限を50回から100回に変更した。
( 2) 運営の見直し状況
ア 第Ⅰ期
は、センターから受託した業務のうち自ら実施する管理監督等を除く業務を日本ス
ポーツ振興くじ株式会社(以下「JSAL」という。)に再委託していた。
JSALは、りそな銀行のほか中核7社等の出資により11年12月に設立された会社
で、りそな銀行から受託した業務のうち中核7社各社が専門とする業務を、各社に再
々委託していた。
イ 第Ⅱ期
センターは、民間企業のノウハウを得て直接運営することにし、経営管理業務及
び情報処理システム開発運用管理業務について日本ユニシスに委託した。
表2 第Ⅰ期のりそな銀行との契約と第Ⅱ期の日本ユニシスとの契約の比較
区分 第Ⅰ期(対りそな銀行) 第Ⅱ期(対日本ユニシス) 契約目的 スポーツ振興くじの売りさばきなど センターが直接運営するに当たり民間企
の業務を全面委託すること 業から、財務や技術に関するノウハウを 得ること
委託業務 投票法第18条第1項に規定する業務 ①経営管理業務
内 容 (スポーツ振興くじの売りさばき、 ( ア) 経営コンサルティング業務 払戻金の支払等の業務及びこれらに ( イ) 事務処理支援業務
附帯する業務(販売システムの管理 ②情報処理システム開発運用管理業務 事務、経理業務、販売関連業務、情
報処理業務、消耗品等供給業務、広 報宣伝業務等))
2 スポーツ振興くじの売上げ、債務、繰越欠損の推移
( 1) 売上げの推移
( 、 )
表3 スポーツ振興くじの売上金額の推移 単位:百万円 回
第Ⅰ期 第Ⅱ期
事業年度
平成13 14 15 16 17 17 18 19
種類
64, 266 34, 636 14, 432 13, 443 9, 488 1, 459 6, 465 7, 442
t ot o
- 1, 421 5, 444 2, 251 174 - -
-t o-t oGOAL
- - - - 2, 957 231 2, 245 1, 927
t ot oGOAL3
- - - 13 61 50
t ot oGOAL2
- - - 580 2, 116 1, 718
mi ni t ot o
- - - 2, 322 48, 140
BI G
- - - 259 3, 167
mi ni BI G
- - - 1, 264
BI G1000
12, 620 2, 284
64, 266 36, 058 19, 877 15, 694 13, 470 63, 711
売上金額
14, 905
(32) (38) (37) (44) (39) (9) (63) (58)
( 2) 債務(りそな銀行に対する未払金) 、繰越欠損金の推移等
ア 第Ⅰ期における債務(りそな銀行に対する未払金)及び繰越欠損金の推移
第Ⅰ期における債務及び繰越欠損金の推移は表4のとおりである。
(単位:百万円)
表4 対りそな銀行未払金及び繰越欠損金の推移
事業年度
平成12 13 14 15 16 17 18 19
項 目
1, 510 5, 656 9, 463 11, 209 17, 504 29, 254 -
-対りそな銀行未払金
433 278 2, 474 9, 436 15, 504 29, 270 26, 417 9, 551
繰越欠損金
前記のとおり、収益は、すべて助成等に充てることとされていて、損失の発生に
備えて準備金等として整理する制度となっておらず、損益計算上の損失が発生した
場合には、その全額を欠損金として処理していた。
なお、平成14、15事業年度の対りそな銀行未払金及び繰越欠損金について、セン
ターは貸借対照表に計上していなかったが、会計検査院の指摘により16事業年度に
おいて是正している。表4は、適正な会計処理を行った場合の金額を記載しているた
め、センターが開示した財務諸表の金額とは異なっている。
イ 繰越欠損金の発生原因
( ア) 損益分岐点に達しない発売総額
制度設計上の発売総額を2000億円として固定費額及び変動費率を計算すると、
損益分岐点は図2のとおり421億円となっていたが、実際には、14事業年度から17
事業年度までの4年間、損益分岐点を大幅に下回る売上金額となったことが繰越欠
損金が生じた最大の要因である。
(単位:億円)
図2 損益分岐点
400
( 運営費の年間額) 運
損益分岐点
183億円+発売総額× 9. 55% 営
300 費
(
200 年
183億円 間
( 発売総額- 払戻金額) 100
421億円 額
発売総額の53%
)
0
100 200 300 400 500 600
( イ) 実効性を持った改善策を早期に執ることができなかったことによる欠損金の増
加
スポーツ議員連盟の改善方策の提言等による政令の改正等がなされるまでは、
センター等が法令等の規制により売上げを向上させる実効性を持った改善策を早
期に執ることができなかったが、これも繰越欠損金を増大させた要因の一つであ
ると考えることもできる。
3 販売システムの運用経費及び開発規模
( 1) 第Ⅰ期
文部科学省は、外部に委託した市場規模の推計に基づき年間発売総額を2000億円と
想定し、これに対応可能な販売システムを開発することを前提に、スポーツ振興投票
の運営を実施するために必要な運用経費を算定し、初期投資額を365億円、年間固定費
額を110億円及び変動費を発売総額の9. 55%としていた。
センターが、りそな銀行、JSAL及び中核7社とともに、スポーツ振興投票業務の
運営に必要な事項の協議機関として設置した運営協議会は、スポーツ振興投票の年間
実施回数等から発売総額1200億円に対応可能な販売システムを開発することにした。
しかし、第Ⅰ期の実際の売上金額は、文部科学省やセンター等の想定をはるかに下
回り、運用経費及び開発規模が相対的に大きなものとなって、欠損金が多額に上る結
果となったと考えられる。
また、センターは、販売店の限られたスペースに端末機をオフシーズンも含め設置
してもらうために必要との判断で、スポーツ振興くじの販売とは直接の関係がない販
売システム等の開発費の全額3億円を負担することとして、初期投資額に含めることを
承認していた。
( 2) 第Ⅱ期
第Ⅱ期においては、センターは、発売総額を600億円と想定し、それに対応可能な販
売システムを開発することとした。第Ⅱ期の販売システムの運用経費を含む運営費の
額は、第Ⅰ期と比べ大幅に減少し、売上金額に対する運営費の比率も、90%を超える
こともあった第Ⅰ期と比べ売上金額が急増したことによる要因もあるものの、19事業
年度には20%を下回っている。
また、損益分岐点も第Ⅰ期の421億円に対して、第Ⅱ期の18事業年度には213億円、
( 3) 第Ⅰ期と第Ⅱ期の比較
表5 第Ⅰ期と第Ⅱ期の比較
区 分 第Ⅰ期 第Ⅱ期
想定事業規模
(販売店数) 10, 000箇所 18, 000箇所 (発売総額) 2, 000億円 600億円 初期投資額 351億円 127億円 販売システムの運用 166億円 97億円
経費の年間平均額 ( りそな銀行への支払委託料) (直営化に伴い発生した費用)
( )
表6 スポーツ振興投票の実績推移 単位:百万円
事業年度
平成12 13 14 15 16 17 18 19
項 目
売上金額( A) 3, 063 64, 266 36, 058 19, 877 15, 694 14, 905 13, 470 63, 711
払戻金額( B) 1, 439 30, 205 16, 947 9, 342 7, 376 7, 452 6, 735 31, 855
時効金等収入等( C) - 79 1, 606 331 147 192 420 497
くじ収入( D) =( A) - ( B) +( C) 1, 623 34, 141 20, 717 10, 866 8, 465 7, 645 7, 156 32, 353
運営費( E) 1, 918 23, 329 20, 485 17, 357 14, 305 14, 781 8, 972 12, 683
委託料(対りそな銀行) 1, 623 22, 637 19, 743 16, 798 13, 798 11, 505 -
-直営化に伴う費用 - - - 2, 748 8, 075 11, 887
その他 295 692 742 559 506 527 897 796
くじ収入- 運営費
( F) =( D) - ( E) ▲ 295 10, 811 231 ▲ 6, 490 ▲5, 839 ▲ 7, 135 ▲ 1, 816 19, 669
助成等( G) - 10, 651 2, 423 331 147 134 145 2, 183
助成準備金繰入額 - 7, 100 1, 615 220 98 89 96 1, 455
国庫納付金 - 3, 550 807 110 49 44 48 727
財務費用( H) 4 5 2 0 106 496 1, 185 624
臨時損益等( I ) 0 - ▲0 2 25 - ▲0 4
投票勘定損益( F) - ( G) - ( H) ▲ 298 154 ▲ 2, 195 ▲ 6, 819 ▲6, 068 ▲ 7, 766 ▲ 3, 147 16, 866 +( I )
繰越欠損金 433 278 2, 474 9, 436 15, 504 29, 270 26, 417 9, 551
4 繰越欠損の解消に向けての取組の状況
センターは、多額の繰越欠損金の発生等を踏まえ、17年8月に収支計画(案)を策定し
たものの、18事業年度の売上金額は計画値の半分にも達しなかった。また、18年9月にみ
ずほ銀行を幹事銀行とするシンジケートローンにより190億円を借り入れ、その借入金等
をもってりそな銀行に対する未払金を一括して支払うとともに、借入金の返済計画を裏
付ける収支計画(案)を策定した。
そして、18年9月から発売開始した新たなくじ「BIG」の売上げが図3のように19事
業年度に急激に増加したことで、19事業年度のスポーツ振興くじの売上金額は637億円と
。 、
越欠損金の残高も95億円となった さらに20年5月に追加で43億円を繰上返済した結果
6月現在の借入金の残高は52億円となっており、その全額が9月末日に繰上返済される見
込みである。
( 、 )
図3 19事業年度の「BIG」の売上金額とキャリーオーバーの推移 単位:回 百万円
また、独立行政法人整理合理化計画(19年12月24日閣議決定)では、センターのスポ
ーツ振興投票業務について、①繰越欠損金をできる限り早期に解消し、くじ助成の確保
に努めた上で、②繰越欠損金解消の見通しがおおむね立つと考えられる21年度末を目途
に、スポーツ振興投票事業の実施体制の在り方も含めた見直しを検討し、結論を得る。
③なお、その間にあっても、債務の返済の見通しが立たないと見込まれる場合には、ス
ポーツ振興投票事業について原点に立ち返った抜本的な見直しを行うこととされた。
検査の結果に対する所見
、 、 、
上記の検査の結果を踏まえ センター及び文部科学省は 今後の事業の実施に当たって
以下の点に留意することが必要である。
( ア) センターは、販売システムの運用経費について、受託者との契約の中に、基礎資料に
より実績等を確認・検証する規定を定めておらず、また、販売システムの開発規模につ
いて、一般的に用いられている手法による妥当性の検証を行っていなかった。
したがって、センターは、今後、販売システムの運用経費及び開発規模について、事
どして事後の確認・検証を可能とする体制を構築し、事後的検証を行う必要があると認
められる。
( イ) 当初の制度設計の段階で、損益分岐点を下回るほどの売上金額の低迷を想定しておら
ず、制度上、損失及び欠損金の発生を想定していなかったことにより、実際に損失が発
生した場合の措置に係る制度上の整備がなされていなかった。
現状では、売上金額が損益分岐点を上回る状態まで回復しているものの、今後、損失
が発生する場合も想定し、その措置に係る制度上の整備を検討することも課題になると
考えられる。
( ウ) 20事業年度の「BIG」の売上げは、20年4月から7月までのところ、毎回15億円から
30億円程度とセンターの想定を上回る売上げとなっているが、センターは、19年12月に
閣議決定された独立行政法人整理合理化計画を踏まえ、繰越欠損金をできる限り早期に
解消するとともに、今後とも、青少年に悪影響を及ぼさないよう販売方法等について十
分留意しつつ、投票法第22条に定める国庫納付を引き続き着実に行いながら、スポーツ
振興のために必要な資金を確保し、もってスポーツの振興に寄与するという制度本来の
目的の達成に努めることが肝要である。
以上のとおり報告する。
そして、会計検査院としては、今後とも、スポーツ振興投票の運営が経済的、効率的に
行われて、上記の投票法の定める目的が達成されているかなど多角的な観点から、引き続